定数前層は層であるとは限らない (constant presheaf is not a sheaf)
空集合の被覆について
を命題で表記すると次のようになる。
このように表記すれば空集合の被覆を考える際に便利である。 上の命題において
の場合を考えると次のようになる。
この命題は真である。なぜなら、 を満たすようなや を満たすようなは存在しないので、前提条件が偽であるからである。
この命題を記号で表記すれば次のようになる。
identity axiomについて
前層が層になるためにはidentity axiomとgluability axiomを満たさなければならない。 identity axiomは次である。
Xを位相空間、をX上の前層とする。Xの開集合の開被覆をとする。
が任意のに対して への制限が等しいときとなる。
この公理は命題として記述すれば次のようになる。
ここで開集合がであるならば、前節の結果により開被覆のindex setとしてとすることができ、このとき上の命題において最初の( )の中の命題が真である。なぜなら を満たすようなは存在しないので、前提条件が偽であるからである。 したがって層の空集合に対応する集合はすべての元が等しくなる。 すなわち1元集合である。
定数前層が層でない例
簡単のために「集合の」定数前層について記述するが、適当な変更により他の圏上でも記述することができる。
まず、定数前層を定義する。 Xを位相空間、 は空でない集合とする。Xの開集合に対して、
によってを定義する。
Xの開集合に包含写像 が存在したとき、制限写像を恒等写像で定義する。
このは明らかに前層である。この前層を集合に関する定数前層(constant presheaf)という。
この定数前層はそうになるとは限らない。その例をあげる。 集合が2つ以上元を持っているとする。集合に関する定数前層が層であると仮定する。
を与える。さらに位相空間Xの開集合であって
を満たすものを与える。をへ制限すれば前節の議論の結果により上ではとなる。これはs,tの取り方に矛盾する。 したがっては層ではない。